泌尿器科

 
 
 
 

腹圧性尿失禁に骨盤底筋運動、腹横筋トレーニングが有効!

 

尿失禁には、くしゃみ・咳をしたときや運動しているときに尿が漏れる腹圧性尿失禁、急に尿意が起こりトイレにたどり着く前に尿が漏れる切迫性尿失禁、これら両方の要素を備える混合性尿失禁があります。

腹圧性尿失禁は骨盤底の構造上、女性に特異的に多い尿失禁であり、分娩・加齢・肥満によりさらにリスクが高まることが知られています。成人女性の約20%にみられ、20歳代までは約4%にとどまりますが、30歳代から18%と増加し、40-80歳代になると約20%の発症率を維持します。また失禁の頻度は出産回数が増すごとに増加し、3回以上の経産婦では約34%に失禁を認めます。

発生には骨盤底筋の機能低下が関連しているため、予防や治療として骨盤底筋トレーニングが一般的に用いられています。骨盤底筋の随意収縮を繰り返すトレーニングで、尿失禁の頻度や失禁量の改善とともに骨盤底筋の筋力増強がみられたことが報告されています。

近年、骨盤底筋を収縮させると腹横筋が収縮し、腹筋群の収縮により骨盤底筋も活性化されるとの報告や、腹横筋の収縮により骨盤底筋も収縮するとの報告もあります。すなわち腹横筋の機能向上は骨盤底筋機能の改善につながると考えられることから、腹圧性尿失禁の予防や治療として腹横筋など腹筋群に対するアプローチが注目されています。

松原らは、骨盤底筋トレーニングおよび腹横筋トレーニングをおこなうことによって骨盤底挙上量が対象に比べて有意に増加していたと報告しています。すなわち、それぞれのトレーニングが骨盤底筋機能を向上させる可能性が示されました。理学療法である骨盤底筋訓練は、女性下部尿路症状診療ガイドラインにおいて推奨グレードAの尿失禁に対する第一選択の治療方法です。さらに腹横筋を中心とした腹筋群に対するトレーニングを併用することで尿失禁に対する治療の有効性が高まる可能性があります。

当院では、理学療法士の指導のもと骨盤底筋および腹筋群のトレーニングをおこなっております。担当する理学療法士は女性ですので、安心してリハビリを受けていただくことができます。治療前後でおこなう泌尿器科的な検査も侵襲的な項目はありません(尿検査やエコー検査等です)。

医療機関への受診がためらわれるデリケートな症状ですが、お困りの方は遠慮なく当院を受診されご相談ください。

 

 

泌尿器科で施行可能な検査について

泌尿器科は、排尿障害(高齢者の夜間および昼間の頻尿、尿意切迫感や切迫性尿失禁、小児の遺尿症など)を有する患者さんをはじめ、尿路悪性腫瘍、尿路感染症や性感染症、ED(勃起不全)、外性器異常などを有する患者さんを対象とした診療科です。

血尿などの精査、健診にて指摘された前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)上昇時の精査(MRI検査につきましては基幹病院等へご依頼いたしますが、経直腸的前立腺針生検は施行可能です)など、またその他の尿路に関連する悪性疾患の精査もおこなっております。

当院に備えております検査機器としましては、

・血尿精査時等におこなう軟性膀胱鏡(エービュー2アドバンス、AmbuⓇ)、

・尿路の形態や残尿量を侵襲なく調べる超音波装置(ARIETTA 650 DeepInsight、FUJIFILM)、

・CT装置(Aquilion Lightning Helios Edition、Canon)

等があります。高分解能を低被ばくで撮像可能な80列160スライスのCT装置は、泌尿器科疾患におきましては、結石の所在診断、水腎症の精査、尿路悪性腫瘍に伴う他臓器病変(転移性肺腫瘍、肝腫瘍、骨腫瘍など)の検査なども可能となっております。当院横山副理事は放射線科専門医であり、その読影もおこなっていただいております。

当院の関連施設であります蓮台寺クリニックでは透視用レントゲン装置も備えておりますので、水腎症精査時に行う逆行性腎盂造影や結石性腎盂腎炎等に対する尿管ステント留置術や尿管ステント交換術も施行可能です。

また、経直腸的前立腺針生検につきましては当院にご入院の上施行可能であり、尿管ステント留置術後などの蓮台寺クリニックでの処置後の入院経過観察、結石性腎盂腎炎等の炎症性疾患や血尿に対する治療入院も可能となっております。尚、手術療法を必要とする患者さんにはご本人やご家族と相談の上、然るべき基幹病院等へのご紹介をさせていただきます。

近年は高齢化が進み、施設などへの入所や在宅療養中で往診を必要とする方が増え、そのような方々の排尿管理に関する問題や尿路感染症によると思われる発熱など泌尿器科医の関わりを要する状況も増えてきております。当院では、泌尿器科疾患に関する訪問診療も実施しております。携行可能な超音波装置(ポケットエコーMiruco、SIGMAX社製)も備えておりますので、膀胱エコーによる残尿量の確認や尿路感染症が疑われる患者さんの水腎症、尿路結石の有無をご施設やご自宅で検査可能です。往診での尿道カテーテル留置および交換や膀胱瘻の交換なども施行可能ですのでお尋ねください。

 

排尿障害

男女共に起こる排尿障害を来す疾患に過活動膀胱があります。急に尿意を催し尿が漏れそうになったり、時にはトイレまで間に合わず漏れてしまう病気です。他の人に相談しにくい症状ではありますがお薬の内服によって改善する方も多くいらっしゃいます。

夜間の排尿回数が増えたり、尿の勢いが無い・途切れる、残尿感が出てくるなど男性のみにある前立腺の腫れによっておこる前立腺肥大症も排尿障害を起こす泌尿器疾患のひとつです。エコー検査や尿流量率検査、残尿量測定などをおこない、症状の程度によってお薬による治療、場合によっては内視鏡を用いた手術療法がおこなわれる場合があります。

その他、くしゃみなどお腹に圧力がかかることにより尿が漏れる腹圧性尿失禁等もありますので、遠慮なく何でもご相談ください。

 
 

泌尿器がん

膀胱がんは男女共に起こりうる尿路悪性腫瘍の代表で血尿を主訴とします。痛みのない血尿が一度出たあと、症状が無く発見が遅れる患者さんもいらっしゃいます。血尿が出現した際は泌尿器科受診を是非お勧めします。手術療法が基本です。

健診等にておこなわれる腫瘍マーカー検査の中に前立腺特異抗原(PSA)があります。前立腺がんの早期発見が可能になる検査ですので、50歳を越えたら一度受けられご自身の検査値をご確認ください。検査値が4ng/ml以上の場合は前立腺がんの可能性があり、MRI検査や前立腺生検などによって確定診断をおこないます。ホルモン療法、手術療法、放射線療法など病期や状況等により治療方法を選択します。

腎臓がんもエコーにて早期発見が可能な疾患です。尿管がんや腎盂がんも血尿等を主訴としますが、エコー検査での腎臓の腫れがきっかけで見つかることもあります。精巣がんは精巣の大きさの左右差で気が付く場合があります。

以上のような症状等で、気になることがありましたら遠慮なく当院へご相談ください。

 
 
 

尿路感染症、性感染症

排尿時痛、頻尿、尿意切迫感、時に肉眼的血尿を認めるのが膀胱炎です。排尿を我慢することや水分摂取が少ない場合などに起こる尿路感染症の代表です。治りにくい膀胱炎は膀胱がんや膀胱結石などが潜んでいる場合がありますので泌尿器科での検査治療をお勧めします。

腎盂腎炎は発熱、腰の痛み等を伴い、膀胱炎が先行することがあります。ご高齢の方や糖尿病等の基礎疾患を有する方は時に重篤化する可能性もあり入院治療を必要とする場合があります。

男性特有の尿路感染症として、前立腺炎や精巣上体炎があります。それぞれ、発熱と共に排尿障害や陰嚢内の痛みを伴う腫瘤を自覚することがあります。

排尿時痛や尿道から膿が出る等はクラミジアや淋菌等の感染による尿道炎を疑う症状です。

その他、陰茎などの皮疹・潰瘍、足の付け根のリンパ節の腫れ、体の湿疹などは梅毒を考える症状です。亀頭の付け根等にできる鶏のトサカのような腫瘤は尖圭コンジローマを疑います。性器ヘルペスでは痛みを伴う水疱が特徴的です。これらは、性交渉によって感染する疾患ですが近年増加傾向にあります。いずれもお薬による治療が基本となりますが、尖圭コンジローマは手術療法を要する場合もありますので、以上のような症状がある場合は泌尿器科を受診されますようお願いいたします。